「ヨーロッパで、どこの国がよかった?」
と、聞かれることがよくありますが、いつも返答に困ります。
風景の美しさや食べ物の美味しさ、人の良さなど、
いろいろな観点からその国を捉えることができますが、
私は何より、様々な人との出会いや思いがけないハプニングが、
その旅を充実させ印象深くする、一番の要素だと思っています。
偶然と驚きへの導きも、その国の持つ素晴らしいパワー。
そういった理由から、夏のヨーロッパ、私のおすすめ第一位はクロアチアです!!
なんとなく惹かれて、一夏を過ごしたクロアチア。
まず向かったのが、ボスニア・ヘルツェゴビナ国境近くに位置する
プリトヴィツェ湖郡国立公園です。
独特なカルスト地形のこの公園には、山間から流れ出る水が
段々畑のように高さの異なる16の湖に流れ込み、8kmにわたって
至る所から水が噴き出し、他の湖へ流れていきます。
写真じゃ言い表せないうつくしさ! |
こんなにも複雑で色んな表情を持つ滝を見たことがなく、終始大興奮。
限りなく透き通った湖水は、そこに生息するコケや藻の働きで
作り物かのようなエメラルドグリーンに光り輝いています。
浮遊魚 |
魚になるなら絶対この湖に生まれつきたいと思うほど、のんびり優雅に泳ぐ魚たち。
自然の神秘! |
これだけ美しい場所なので、やはり観光客やバックパッカーたちが集まります。
なるべく静かにゆったりと自然を味わいたかったため、早朝に公園へ向かうとほぼ貸切状態!
また朝の太陽の光がぴったりくる光景に、早起きしてよかったなぁとつくづく感じる。
今は自然保護のため、決められたトレイルハイキングしか出来ないけれど、
数年前までは自由に泳いだりキャンプできたのだとか。
何千年とかけて変化し続けるこの自然美と、どうか共存していけますように
と願わずにはいられない美しさに、ただただ圧倒されます。
いつか泳ぎたい |
さぁ、旅のハイライトはここから。
湖からバスでスピリットという街へ向かい、そこからフェリーで2時間半、
アドリア海に浮かぶクロアチア本土から最も離れた島、ヴィス島が、
このクロアチア旅のメインです。
まず予約していたゲストハウスへ向かうと、レセプションならぬ小さな食卓におばあちゃんが一人。
彼女が自宅の数部屋を、ゲストルームとして貸しているようだ。
探究心をくすぐる細い路地いっぱい |
ゲストハウスのエントランス |
とてもリーズナブルなゲストハウスにも関わらず、共用キッチン付きで、
屋上のテラスからは真っ青な海が目の前に広がる最髙の景色!
ゲストハウスのテラスから |
クロアチアで面白いなと思ったのは、おつりが適当なところ。
数円の小さなおつりは返ってこず、また支払いのときも数円は切り捨ててくれる。
お互いのさじ加減で臨機応変に価格が変動するラフさ、とってもいい感じ。
ゲストハウスで自炊して、屋上のテラスで食事をしていたある夜、
テラス横の部屋に泊まっている男性が出てきた。
すかさず食事にお誘いして、すぐに意気投合。
彼 (ニキ)はドイツとクロアチアのハーフで、夏は毎年この島で過ごしているのだという。
物腰の柔らかさとは裏腹に、黄金色に焼けた肌とムキムキの筋肉をみて、
何をやっている人だろうな〜と想像を膨らませていると、
「明日レンタサイクルで、一緒にシークレットビーチへ行かないか?」
とお誘いが。ニキは自転車競技をしていて、半日自転車をこぎ続けることもあるらしい。
「いく!!!!!」
ふたつ返事で、翌日のサイクリングが決まった。
ニキ&エリオット |
旅先でレンタサイクルをすることはよくあるが、今回はチャリのプロが一緒。わくわく感がより一層増す。
その知る人ぞ知るシークレットビーチへは、まず街を見下ろす山を越えなければならない。
マウンテンバイクで街を勢いよく飛び出したが、
延々と続く登り坂で私とエリオットの速度はすぐに降下していった。
気合いで食らい付くが、ペダルがなかなか前へ進まない。
そんな私たちの横でニキは、坂を登っては下りを何度も繰り返している。
。。信じられない余裕だ。
その後、登っても登っても終わらない登り坂にかなり遅れをとりだした私を見かねた
ニキが、靴紐のような長い紐を取り出し、チャリごと私を引っ張ってみようか?と
私のチャリとニキのチャリを紐で結びだした。
さすがにニキとはいえ、そんな細い紐で、しかも私とチャリ一緒になんて。。。。。
進んだ!!!!!!
しかもかなりの速度でぐいぐいと!私が漕がなくても進んでいく。
さっきまでだいぶ前方にいたエリオットが、今は米粒に見えるほど後方にいる。
この優越感ったらたまんない。
私は後半ラクをして、エリオットは赤ちゃんのハイハイ並みのスピードで奮闘して、
みんな山の頂上へ到着!
街を一望できる絶景 |
頂上からの景色に見とれながらも、シークレットビーチへの道はまだ長いので先を急ぐ。
ワイン畑や森の中を、汗だくで進んでいく。
歩くのもいいけど、どんどん移り変わる風景の中を疾走するのもいい。
この暑さには、全身にあたる風が本当に心地よかった。
4時間ほど自転車を漕ぎ続けた私たちは、空腹感でいっぱいになっていた。
街ボケしていたせいか、なんの食料も常備していなかったのだ。
レストランらしきものはまったく見つからない。
ビーチもなかなか見つからず、ニキの記憶を辿りながらさまよっていると、
森の中にぽつんと民家が一軒。その横に手作りの看板で、‘Restaurant’と書いてある。
どう見ても普通のおうちなのだが、畑に水をやっているおじさんに声をかけた。
すると、どうしたどうしたと一家全員が出てきて、
3時間後に戻ってきてくれたらご飯を用意しておくよという。
そして私たちが探しているシークレットビーチもこのすぐ近くだという情報を得たので、
先にビーチへいって、また戻って来る約束をした。
メニューもない、完全おまかせ料理はいったいどんなのだろう。期待がふくらむ。
シークレットビーチへの道のり |
本当にビーチがあるの?というような、自転車では到底いけない断崖絶壁を徒歩でおりていく。
海面が近づくにつれ、そのビーチが姿を現してきた!!
あそこだーー! |
紅の豚にでてくるプライベートビーチのような岩に囲まれたビーチは、
まさに絵に描いたような空間だった。
ここはカップルたちがお忍びでくるビーチであり、また飛び込みのスポットだそう。
そうとなれば、スポーツマン、ニキの登場。
かなりの高さから見事なバク宙を決め、周りの人から歓声と拍手が起こる。
彼の身体能力の高さに、私たちは驚かされっぱなしだった。
ニキ、ダーイブ! |
約束どおり3時間後、5回目くらいの空腹絶頂で民家に戻ると、緑に囲まれた外のテラスへ案内された。
テーブルにはきちんとテーブルセットとワイングラス。
そして新鮮な魚介と野菜がてんこ盛り!!!
街で食べたどんな料理よりも美味しくて、私たちは勢い良くかぶりついた。
味、ロケーション、シチュエーション、人、すべてがパーフェクトだった。
料理しか目に入らない |
そのおうちは普段はワインと野菜作りをしていて、レストランのお客はめったに来ないそうだ。
急な訪問にもかかわらずあたたかく迎え入れ、じっくり時間をかけた料理を
振る舞ってくれたことに感謝をし、自家製ワインを買って一家を後にした。
ここも、またもう一度戻りたい場所のひとつだ。
帰り道の途中の一番眺めのいい場所で、その自家製ワインを片手に
サンセットを楽しみながら、その日一日を振り返った。
60kmに及ぶ、山あり海ありの自転車旅。
夕日をバックに。ニキムキムキ |
ニキと出会ったことで、のんびりビーチで寝そべっていたであろう一日が、
思い出深いアドベンチャーな一日へと変貌した。
プランどおりに行動するのもいいけど、私はやっぱりその時の直感と流れに身を任せてみたい。
それでこそ旅の真髄が味わえる気がする。
自分がオープンな感覚でいたら、自然とそういう機会は訪れるものだと再確認した。
冬になって、ニキとはミュンヘンで再会。
素敵な時間を共有した人とは、住む場所は違えど世界のどこでまた必ず会える。
こうゆう繋がりとミラクルがあるから、やっぱり旅はやめられない!!
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