ゴーチャ峠を目指すトレッキング2日目。
太陽に後押しされて軽快に歩いていたのも束の間、
また深い霧が立ち込みだす。
標高3400mを越えたあたりから、今まで見たことのない高山植物でいっぱいになった。
赤やピンクの大きな花が咲き乱れる |
はじめのうちは、シャクナゲの林や色とりどりの花に感動して、
立ち止まって写真を撮りたいなぁなどと思っていたけど、
気付けば歩くことだけに必死で、そんな余裕なんてまったくなくなっていた。
霧もどんどん深くなり、数メートル先でさえちゃんと見えない。
酸素が薄くなってきたせいで、意識が朦朧としてきた。それに高山病の吐き気と頭痛も加わって、
嗚咽を繰り返しながら何とか一歩ずつ前へ出す。
意識が飛びそうになる度に、正気を保とうと何度も頭を振った。
なんでこんなしんどいを思いを自らしてるんだろう、と、
安易にここへ来たことにも少し後悔してきた。
綺麗だと思っていたうねうねの木も、こっちへ迫り狂ってくるようで不安を増殖させる。
不安定な精神状態と周りの情景が、完全にシンクロした瞬間だった。
この時からエリオットにも激しい頭痛が始まる。 |
まさにティムバートンの世界(映画ビッグフィッシュ) |
一言でも弱音を吐いたら、もう身体が動かなくなるような気がした。
ふとエリオットに、「私の顔色どう?」って聞くと
「そんなに悪くないよ。」と返事が帰ってきたので、
あ、なんだ案外大丈夫なんだ、と思い、ちょっと気が楽になった。
あとになってから聞くと、この時の私の顔色は、血の気のない真っ青なひどいもの
だったらしい。機転を利かしてくれて、ほんとによかった。
その頃エリオットは、一歩動く度にズキズキと響く激しい頭痛に襲われていたので、
しんどいのは自分だけじゃないという一心で、ひたすら一歩ずつ着実に進んだ。
そこから先は、頭の中は完全に無の状態。しんどさも麻痺していた。
そうしていると突然、覆いかぶさっていた木々が全部消え、視界がぱっと開けた。
見渡すと、目の前には平坦な野原が広がっていた。
小さな白い花が、あたり一面に咲いている。
そこだけふわふわ浮いているような錯覚に襲われ、
直に体感できるくらいすっーと身体の疲れが抜けていく。
夢の中にいるような、不思議な静寂の空間。
まさにここー!! (映画おおかみこどもと雨と雪より) |
ここから第二お泊まりポイントまでの道中については、あんまり覚えていない。
この日は全部で約8時間ほど歩いた。
キャンプサイトに着いてフラフラになりながらテントを張ったけど、
夕方からの雷と稲妻にビビり、インド人6人がひしめく山小屋部屋に混ぜてもらって寝た。
結局その晩、雨は降らなかった。
けん玉ブレイク |
早朝3時、山小屋から一時間歩いたゾングリという山の頂上へ
朝日に照らされるカンチェンジュンガを見に行くため、たたき起こされる。
この状況での早起きはかなり辛く、半分寝ながら暗闇の中を歩いた。
朝日が上り、あたりが明るくなるにつれて雲が薄れていき、
真っ白の尖ったカンチェンジュンガが姿を現した。
右奥がカンチェンジュンガ。たぶん。 |
チリンとエリオット。標高4250m地点 |
しんどい思いをして登山をする理由と楽しみは、頂上から見た景色の感動と達成感だと
思っていたが、実際この時そこまでの感動はなかった。
きっと、ここへ辿り着くまでの過程があまりに激動だったからだろう。
エリオットの高山病がその後も回復しなかったため、次のゴーチャ峠へのアタックは断念。
インド人グループにお別れをし、4人で下山の途につく。
下れば下るほど息がしやすくなり、身体が軽くなっていく。
エリオットの頭痛も500mほど下るとしだいに消えていった。
登った同じ道を下ることで、こんなにも意識朦朧の中登ってたんだって実感した。
最後の山小屋での夜、寄生虫にお腹をやられて
夜中じゅうトイレを行き来するという災難には合ったけど、
澄み切った三日月を独り占めできたから、まぁよしとしよう。
最終目的地まで辿り着いてたら、また何か違った感情もあったのかな、と思うと
少し名残惜しかったけど、なかなかの極限状態まで経験できた初トレッキング。
正直、あんなキツい思いはもうしたくない。。
またヒマラヤ登山をしたいか?
って聞かれたら、このときの答えは「 No 」
とはいっても、このインドの旅はヒマラヤのためだからやっぱり行くんだけど。笑
次のトレッキングは、ガンジス河の源流氷河を目指します!!
おまけ。山小屋ネコと遊ぶ |
好青年チリン、ありがとう! |
Some of photos from Jeremy
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