食料ばっちり!
ロバさんも一緒!!
無限に広がる青い空!!!
準備は整った!!!!
さぁ、未知なる世界へ!!!!!
山が「やぁ」って私たちを出迎える |
標高はすでに4000mを越えてるいるが、なんといっても砂漠地帯。
太陽が至近距離で私たちを照らしつけ、汗がすぐに噴き出す。
広大な大地。
色とりどりの土や石。
これから2週間のトレッキングで、どんなことが起こるのかと心が躍り、
足取りもふわふわしてる私をよそに、ジェリーとエリオットの顔色は冴えなかった。
二人は今朝になってもまだ嘔吐と下痢を繰り返していた。初日のコンディションとしては最悪。
だけどここまで来たからにはもう引き返すことはできない。
全部ポケットに詰め込んじゃいたい |
はじめの数時間は皆一緒に歩いていたのだが、昼休憩を終えたあたりから皆のペースにばらつきが出始た。
隣にいるエリオットの顔色はさらに悪くなる。
何度も立ち止まり嘔吐を繰り返しているうちに、精神的にも参りはじめ、
ついにはこの状態でこれから2週間も登山テント生活は無理だ、引き返すと言い出した。
確かに食料も限られているため、どこかで休みながらゆっくり進むこともできない。
が、街からは車で10時間も離れた土地。
ジープに迎えにきてもらうにしても何日かかるか分からない。
その行程を考えるだけで気が遠くなった。
そして何より、私はどうしても歩きたかった。
ここで引き返すなんて、後悔が目に見えている。きっとそれはエリオットにとっても。
穴からヒマラヤマーモットさんこんにちは |
「わかった、次にジープが通りかかったら、一緒に引き返そう。」
と、ジープが通ることなんてないと確信しつつ (ごめん) エリオットにそう告げ、
とりあえず前へ進んだ。
エリオットは引き返せるという安心感を得たのか、少しだけ前向きになったようだった。
雲に手が届きそう |
歩きはじめて7時間。
暑さとコンディションの悪さから、みんなの疲れががっつり表面にでてきた。
ドイツ人ヨハネスは独自のルートをマイペースに進み、姿は見えない。
エリオットとジェリーはぐったりして座り込んでいる。
りょうくんとちひろちゃんも暑さに体力を奪われ、後方で座っているのが見えた。
今晩のテントポイントはまだまだ先のようで、ロバさんとロバ飼いの少年は
私たちにお構いなく川の対岸の数百メートル先を歩き続けている。
どう見ても、皆の状態からしてこれ以上進むことは厳しくて、
どう考えても、今ピンピンして頼りになるのは自分だけだった。
ロバさんとロバ飼い少年を引き止めなければ!
彼らに声が届く距離ではなかったので、
「ここで待っててね。」とエリオットとジェリーに告げ、走って丘を駆け下りた。
責任感からか、全身にパワーが漲ってくるのを感じて全速力で走った。
川を渡ればロバさんまであと少しなのに、絶妙な水深と川幅でどうしても渡れない。
じれったくなって、川の横ぎりぎりを走っていると、
ずぼっ!と足がハマり、川に転落してしまった。
すぐに這い上がれたが、全身ずぶ濡れ。
こうしている間にも、ロバさんたちは先へ行ってしまうーーー、、
と思っていると、後ろから「大丈夫!?」とエリオットが走ってくるのが見えた。
泣き言いって、私一人を行かせてたらダメだ、と思い直し、追ってきたらしい。
その時のエリオットの顔色は随分と良くなっていた。
結局、助けられてしまった。
ロバさんからウマさんへ |
その後、ロバさんとロバ飼い少年と引き止め、当初の予定より手前でテントを張って、ご飯を食べた。
人の感覚や感情は、ほんとうに人それぞれで、その深さは他人には計り知れない。
それと同じで、体の調子を左右するのも自分自身。
それがどれくらい精神面からきているものなのかは他者にも、むしろ本人にも分からない。
だけど、人が気持ちと行動で与えられるものは、薬よりも強い見えないパワーを秘めてると思う。
そんなことをじっくり感じた、てんやわんやの初日。
その晩、行き先の関係から、ロバさんからウマさんクルーへと交渉の上チェンジ。
初日は足慣らし、今日から道も狭まり、アップダウンが激しくなる。
翌朝、エリオットとジェリーの体調がぐっと回復したのと引き換えに、
ヨハネスに同じ症状が現れた。仲間内感染の疑いは濃い。
ということはプラスにいうと、数日で治る病ということだった。
高い!! |
ウマたちのお世話係に任命されたエリオットとジェリー、ウマさん5頭とウマ飼いのスリさんを置いて、
先にりょうくんちひろちゃんと出発する。
目の前に、登るべき山が立ちはだかる。
急勾配になってきても、ペースは落ちない。
息が上がりだしても、全然しんどくない。
むしろ気持ちいい!!
ふと後ろを振り返ると、りょうくんとちひろちゃんが米粒に見えるほど距離が離れていた。
進むべきルートはひとつなので、気にせず先を歩く。
山のトップに近づくにつれ、雪でトレイルが埋まり、気温が下がってきた。
頂上まであともう少し。
はじめての標高5000m越えに感情が高ぶる。
空気の薄さで呼吸が乱れても、この山の向こう側にはどんな世界が広がっているのか、
と思うと思わず早歩きになった。
その山の向こう側! |
ひとりで足を踏み入れる、地上から5000mを越えた場所。
歩いてきた茶色い土色の山とは違い、向こう側には灰色の切り立った岩山の景色が広がっていた。
すごい所にたどり着いた、と思った。
皆が頂上へたどり着くまで、ひとりの時間を静かに過ごす。
なんの雑念もない、まっさらな状態。自然からのパワーってすさまじい。
そして30分ほど後、りょうくんとちひろちゃん、スリさんとウマさんご一行が到着。
エリオットとジェリーは体調不良のヨハネスに付き添っているという。
かなりゆっくりなペースのヨハネスを見かねて、スリさんがウマさん1頭を連れて
彼を迎えにいっている間、残りの4頭と一緒に待機していたのだが、
そのうち1頭に鳥が衝突したか何かをきっかけに、急にウマさんがパニックになって暴れ出し、
山を猛ダッシュで走り下りていってしまった!
それに続き、残りの3頭も後に続いて猛ダッシュで走っていく!
ウマは群れで行動を共にするというのは本当だった。
そこでりょう君が、反射的に持っていた杖を振りかざし、熟年の馬飼いさながらに
声を張り上げ、ウマたちを追って山を駆け下りていった。
止まる気配のない猛ダッシュするウマの群れ、を後から杖を振り回し必死で追うりょう君。
その一部始終が山の頂上から見え、あまりにもマンガのような一コマに
申し訳ないと思いつつも涙を流して笑った。
あるこう、私は元気! |
りょう君のナイスファイトのおかげでウマたちも帰ってきて、
みんなまた揃って次のテントポイントへ歩き出した。
それから3時間ほど歩いたあと、
「ほら、あそこが今晩テントを張るところだよ。」
と言ってスリさんの指が指した先は、え、どうやっていくの?といった感じの
緑がぽっかりと浮かぶ場所だった。
あの緑色のところまでいきまーす |
鳥だったなら軽くひとっ飛びだろうが、私たちの足だとぐる〜っと回り込んで
谷を下り、また谷を登らなければならない。
目的地は目の前なのに、その道のりはまだ遠い。
皆より先にテントポイントに着き、テントを張ってご飯を作っておくつもりで
ハイペースで歩いていたウマたちとスリさん、そして私とエリオットは、
後に続く皆にルートを伝えるため、地面に石で矢印マークをつくりながら進んでいった。
道に迷わずにがんばって来てね、と念を込めて。
ぽっかり浮かぶ村に近づいてきた |
村へ入ると、人がぽつぽつと現れ、農作業をしていた。
皆笑顔であいさつしてくれて、ラストの谷越えでの疲労感も癒されていく。
そうゆっくり休憩している間もなく、村の端にある平らな場所に
テントを広げ、石で野外キッチンをつくり、野菜をカットしだした。
スリさんとエリオットと、分担して作業を進めていると、
無事に残りのメンバーも夕暮れ頃に到着。
自炊した野外で食べるご飯は、やっぱり最っ高に美味しい。
農作業をする少年 |
真っ暗になる夜20時には片付けを終えてテントイン。
明日出会うまだ見ぬ世界にドキドキしながら、寝袋に包まった。
つづく。
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