Loading...
2014/08/07

ヒマラヤを歩く 〜極めつけのザンスカール 2weeks編 その1〜


食料ばっちり!
ロバさんも一緒!!
無限に広がる青い空!!!
準備は整った!!!!
さぁ、未知なる世界へ!!!!!
山が「やぁ」って私たちを出迎える

















標高はすでに4000mを越えてるいるが、なんといっても砂漠地帯。
太陽が至近距離で私たちを照らしつけ、汗がすぐに噴き出す。

広大な大地。
色とりどりの土や石。
これから2週間のトレッキングで、どんなことが起こるのかと心が躍り、
足取りもふわふわしてる私をよそに、ジェリーとエリオットの顔色は冴えなかった。
二人は今朝になってもまだ嘔吐と下痢を繰り返していた。初日のコンディションとしては最悪。
だけどここまで来たからにはもう引き返すことはできない。


全部ポケットに詰め込んじゃいたい


















はじめの数時間は皆一緒に歩いていたのだが、昼休憩を終えたあたりから皆のペースにばらつきが出始た。

隣にいるエリオットの顔色はさらに悪くなる。
何度も立ち止まり嘔吐を繰り返しているうちに、精神的にも参りはじめ、
ついにはこの状態でこれから2週間も登山テント生活は無理だ、引き返すと言い出した。

確かに食料も限られているため、どこかで休みながらゆっくり進むこともできない。
が、街からは車で10時間も離れた土地。
ジープに迎えにきてもらうにしても何日かかるか分からない。
その行程を考えるだけで気が遠くなった。

そして何より、私はどうしても歩きたかった。
ここで引き返すなんて、後悔が目に見えている。きっとそれはエリオットにとっても。


穴からヒマラヤマーモットさんこんにちは


















「わかった、次にジープが通りかかったら、一緒に引き返そう。」
と、ジープが通ることなんてないと確信しつつ (ごめん) エリオットにそう告げ、
とりあえず前へ進んだ。
エリオットは引き返せるという安心感を得たのか、少しだけ前向きになったようだった。


雲に手が届きそう
























歩きはじめて7時間。
暑さとコンディションの悪さから、みんなの疲れががっつり表面にでてきた。

ドイツ人ヨハネスは独自のルートをマイペースに進み、姿は見えない。
エリオットとジェリーはぐったりして座り込んでいる。
りょうくんとちひろちゃんも暑さに体力を奪われ、後方で座っているのが見えた。

今晩のテントポイントはまだまだ先のようで、ロバさんとロバ飼いの少年は
私たちにお構いなく川の対岸の数百メートル先を歩き続けている。

どう見ても、皆の状態からしてこれ以上進むことは厳しくて、
どう考えても、今ピンピンして頼りになるのは自分だけだった。

ロバさんとロバ飼い少年を引き止めなければ!
彼らに声が届く距離ではなかったので、
「ここで待っててね。」とエリオットとジェリーに告げ、走って丘を駆け下りた。
責任感からか、全身にパワーが漲ってくるのを感じて全速力で走った。

川を渡ればロバさんまであと少しなのに、絶妙な水深と川幅でどうしても渡れない。
じれったくなって、川の横ぎりぎりを走っていると、
ずぼっ!と足がハマり、川に転落してしまった。
すぐに這い上がれたが、全身ずぶ濡れ。
こうしている間にも、ロバさんたちは先へ行ってしまうーーー、、
と思っていると、後ろから「大丈夫!?」とエリオットが走ってくるのが見えた。

泣き言いって、私一人を行かせてたらダメだ、と思い直し、追ってきたらしい。
その時のエリオットの顔色は随分と良くなっていた。
結局、助けられてしまった。


ロバさんからウマさんへ
















その後、ロバさんとロバ飼い少年と引き止め、当初の予定より手前でテントを張って、ご飯を食べた。

人の感覚や感情は、ほんとうに人それぞれで、その深さは他人には計り知れない。
それと同じで、体の調子を左右するのも自分自身。
それがどれくらい精神面からきているものなのかは他者にも、むしろ本人にも分からない。
だけど、人が気持ちと行動で与えられるものは、薬よりも強い見えないパワーを秘めてると思う。

そんなことをじっくり感じた、てんやわんやの初日。
その晩、行き先の関係から、ロバさんからウマさんクルーへと交渉の上チェンジ。


初日は足慣らし、今日から道も狭まり、アップダウンが激しくなる。
翌朝、エリオットとジェリーの体調がぐっと回復したのと引き換えに、
ヨハネスに同じ症状が現れた。仲間内感染の疑いは濃い。
ということはプラスにいうと、数日で治る病ということだった。


高い!!


















ウマたちのお世話係に任命されたエリオットとジェリー、ウマさん5頭とウマ飼いのスリさんを置いて、
先にりょうくんちひろちゃんと出発する。

目の前に、登るべき山が立ちはだかる。
急勾配になってきても、ペースは落ちない。
息が上がりだしても、全然しんどくない。
むしろ気持ちいい!!

ふと後ろを振り返ると、りょうくんとちひろちゃんが米粒に見えるほど距離が離れていた。
進むべきルートはひとつなので、気にせず先を歩く。
山のトップに近づくにつれ、雪でトレイルが埋まり、気温が下がってきた。
頂上まであともう少し。
はじめての標高5000m越えに感情が高ぶる。
空気の薄さで呼吸が乱れても、この山の向こう側にはどんな世界が広がっているのか、
と思うと思わず早歩きになった。


その山の向こう側!
















ひとりで足を踏み入れる、地上から5000mを越えた場所。

歩いてきた茶色い土色の山とは違い、向こう側には灰色の切り立った岩山の景色が広がっていた。
すごい所にたどり着いた、と思った。

皆が頂上へたどり着くまで、ひとりの時間を静かに過ごす。
なんの雑念もない、まっさらな状態。自然からのパワーってすさまじい。


そして30分ほど後、りょうくんとちひろちゃん、スリさんとウマさんご一行が到着。
エリオットとジェリーは体調不良のヨハネスに付き添っているという。

かなりゆっくりなペースのヨハネスを見かねて、スリさんがウマさん1頭を連れて
彼を迎えにいっている間、残りの4頭と一緒に待機していたのだが、
そのうち1頭に鳥が衝突したか何かをきっかけに、急にウマさんがパニックになって暴れ出し、
山を猛ダッシュで走り下りていってしまった!

それに続き、残りの3頭も後に続いて猛ダッシュで走っていく!
ウマは群れで行動を共にするというのは本当だった。

そこでりょう君が、反射的に持っていた杖を振りかざし、熟年の馬飼いさながらに
声を張り上げ、ウマたちを追って山を駆け下りていった。

止まる気配のない猛ダッシュするウマの群れ、を後から杖を振り回し必死で追うりょう君。
その一部始終が山の頂上から見え、あまりにもマンガのような一コマに
申し訳ないと思いつつも涙を流して笑った。


あるこう、私は元気!
















りょう君のナイスファイトのおかげでウマたちも帰ってきて、
みんなまた揃って次のテントポイントへ歩き出した。

それから3時間ほど歩いたあと、
「ほら、あそこが今晩テントを張るところだよ。」
と言ってスリさんの指が指した先は、え、どうやっていくの?といった感じの
緑がぽっかりと浮かぶ場所だった。


あの緑色のところまでいきまーす


















鳥だったなら軽くひとっ飛びだろうが、私たちの足だとぐる〜っと回り込んで
谷を下り、また谷を登らなければならない。
目的地は目の前なのに、その道のりはまだ遠い。

皆より先にテントポイントに着き、テントを張ってご飯を作っておくつもりで
ハイペースで歩いていたウマたちとスリさん、そして私とエリオットは、
後に続く皆にルートを伝えるため、地面に石で矢印マークをつくりながら進んでいった。
道に迷わずにがんばって来てね、と念を込めて。


ぽっかり浮かぶ村に近づいてきた


















村へ入ると、人がぽつぽつと現れ、農作業をしていた。
皆笑顔であいさつしてくれて、ラストの谷越えでの疲労感も癒されていく。

そうゆっくり休憩している間もなく、村の端にある平らな場所に
テントを広げ、石で野外キッチンをつくり、野菜をカットしだした。
スリさんとエリオットと、分担して作業を進めていると、
無事に残りのメンバーも夕暮れ頃に到着。

自炊した野外で食べるご飯は、やっぱり最っ高に美味しい。


農作業をする少年























真っ暗になる夜20時には片付けを終えてテントイン。


明日出会うまだ見ぬ世界にドキドキしながら、寝袋に包まった。


つづく。
















0 コメント:

コメントを投稿

 
TOP