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2014/10/22

世界をぎゅっと縮小したような街  ケープタウン


南アフリカで暮らし始めてから、ちょうど2ヶ月経った。

相変わらず格差社会や人種問題とどう向き合うかという葛藤と、
今自分に何ができるか、何をすべきかなんてゆうエンドレスな自問自答が
頭の中をぐるぐると回り続けている中で、
「ここでの生活はどう?気に入った?」
と、こっちで知り合った友人に聞かれると、いつもたじろいでしまう。

だから、簡潔な返答が求められるときは、こう答えることにした。

「南アフリカの自然とアウトドアシーンは最高で大好き!」

それはほぼ100%誰もが同意する答えだろう。
時間が経過するにつれ、南アフリカの壮大な自然の魅力に
どんどん惹き込まれているのは確かな感覚としてあった。


南ア人の命 Braai(バラーイ) BBQロケーション















ケープタウンは、大都会と大自然が融合した、世界でも稀に見ぬ街だ。

レストランやバーが立ち並ぶにぎやかなストリート沿いにある私の家から
車を10分ほど走らせると、地中海のようなクリアブルーのビーチがあり、
登山道が数え切れないほどあるワイルドな山々がその横にそびえ立つ。

仕事が終わってから日没までのわずかな時間に、
さくっと気軽にロッククライミングできちゃう隠れスポットもあり、
とにかくアウトドアアクティビィティの豊富さが半端じゃない。

高所恐怖症克服の為、ロッククライミング始めました。


















ここに来て始めて知ったスポーツ、カイトサーフィン




























オーストリアのインスブルッグというアルプス山脈に360°囲まれた街を訪れたときもそうだったけど、
こういった自然に囲まれて育った都会人は、かなりアクティブでタフだ。

週末のハイウェイが、マウンテンバイクやカヤックを積んだ車、
クレイジーなキャンピング装備を牽引している車でいっぱいになるのも納得がいく。

このアクティビィティ満載の大自然と青い空を目の前にして、室内で過ごす気には早々なれない。
都会での日中の遊び方を忘れてしまうほど、自然が日常生活の中にすっと入り込んでくる。


ナチュラルプール。まるで人工物のような美しさ














しかしケープタウンの凄いところは、アウトドア好きでない人も充分楽しめる環境であることだ。

街にはテラスでビールを飲めるオシャレなカフェが沢山あり、
アートギャラリーや美術館があり、ナイトクラブだってある。

東京都より少し大きいくらいの土地に、東京の都会の一部、
北海道の自然の一部、沖縄の海の一部をぎゅっと詰め込んだような、
まさにオールインワンの街、ケープタウン。


都心部をでると、まるで北海道のような光景が広がる

















ケープタウンの楽しみ方がピンからキリまであるように、
そこに住む人々の生活環境も多種多様だ

決まって美しい海岸沿いとテーブルマウンテンの辺りには、
プール付きの豪邸やアパートがそれを取り囲むように建てられている。


waterfrontの観光地と高級住宅街
















そして中心部を抜けるとすぐに、トタンで作られた今にも崩れ落ちそうな家が
ひしめき合うタウンシップが、数十キロに渡ってハイウェイ沿いに広がる。


タウンシップ














走っても走っても途切れない、その超巨大なタウンシップを横目に見ながらハイウェイを通り抜けるとき、
私たちの住む世界とまったく違う世界がこんなにも近くに存在していることに、
妙な違和感を感じ、色んな思いが頭をよぎる。


タウンシップの中でも、学校や病院があるような地区から、
ギャングが統率して犯罪が耐えない地区まで様々なようだ。

銃をあたりまえのように所持している‘ギャング’が実際近くに存在しているという事実を
頭では分かっていても、あまりに私たちの生活とはかけ離れていて信じられずにいたのだが、
タウンシップからエリオットの職場へ通うクリーナーの女性の旦那さんが、
最近タウンシップ内で銃で打たれて亡くなったと聞き、その事実を認めざるを得なかった。

悲しいけれど、そこは携帯電話1つを奪うために銃を乱射するような世界なのだ。


南アフリカでチャリティ活動を20年間続けている知り合いのおじさんによると、
これでもタウンシップの治安は少しずつだけど良くなっているという。
その言葉に少し気が和らいだが、南アフリカ人がタウンシップから離れる同時に、
情勢のよくないコンゴやスーダンからの難民が南アフリカのタウンシップに流れていると聞き、
またどうしようもない気持ちになった。


夕焼けに照らされるハイウェイ
















郊外のタウンシップに住む人たちのほとんどが、ケープタウンの中心地へ働きにでている。

自宅の窓から外を眺めると、白人の赤ちゃんを乗せたベビーカーを引いた黒人女性が道を行き交い、
向かいの若い白人カップルが住むアパートのベランダでは、黒人女性が彼らの洗濯物を干していた。
そして街で黒人が犬を散歩しているのを見掛けたら、それは彼らのペットではない。

世界中からの移民で溢れかえるロンドンでも、人種によって仕事は分かれていたけれど、
ここでは肌の色によって仕事の種類がきっぱりと分かれている。


白人の南アフリカ人の友人に、アパルトヘイト時代のことを聞くと、
彼らが生活している地域で黒人を見掛けることはなかったらしく、
いるとしたらカラード(アジア系との混血人種)で、幼い子供ながらに
他の人種の子供と一緒に遊ぶことをためらったらしい。
そして彼は、無意識のうちに人種差別という感覚がどこかに染み付いていると思う。
と言った。

子供のころに培ったそういった経験が、今の彼らに少なからず影響を与えていることが
伺える場面に出くわすことも、実際少なくはない。

スプリングボックの群れ


















自然を楽しむ以外の時間を、この悶々とした気持ちで過ごしていても何も良いことがないので、
街でうつむくのはやめて、エリオットがさり気なく実施しているという
‘ すれ違う人みんなに微笑みかける運動 ’を私も始めてみた。

すると面白いことに、タウンシップから街に出てきているであろう黒人のほとんどの人
にっこりと微笑み返してくれて、白人の多くの人が無反応という不思議なことが起こった。

私よりこの運動を長く続けているエリオットも、同じ結果だという。

うっとりするシルエット















景色のいい豪邸に住み、毎晩レストランで外食する人、

インフラ設備も整っていない小さな家で、質素な生活をする人。

私が日本という恵まれた環境に育ったことは確かだけれど、
生まれながらに厳しい境遇に置かれた人々に対して
一概に同情できるような立場でもない。


生活の豊さと心の豊かさは決して比例していないことを、この街は教えてくれる。


ほんとうの幸せは、表面ではなく、見えない内側にあるのだ。





世界の縮図のような街、ケープタウンでの旅はつづく。


すっぽり山の頂上を切り落としたような
















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