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2014/04/18

ヒマラヤを歩く 〜秘境パールバティ渓谷編, 1日目〜


インドでのヒマラヤトレッキングも、これではや4度目。

遭難の恐怖も、体の痛みも、あちゃの村で完全に癒え、
また山と対峙するトキがきた。

今回歩くルートは、過去に行方不明者や転落死亡者が出たことから、
トレッキングルートとして今は誰も足を踏み入れない、
というより踏み入れられない土地だ。

だけど、今回はあちゃとその家族のローカルインド人青年3人が一緒なので、
特別に連れていってもらえることに。とても心強かった。
あとのメンバーは、偶然再会した山経験豊富なフランス人ケヴィン、
そしておなじみイギリス人ジェリーとエリオット。
体力が一番ないのはどう考えても私なので、足を引っ張らないよう気合いを入れ、
バックパックを出来る限り軽くパッキングする。
面白いことに、毎トレッキングごとにバックパックが軽くなっていく。
不必要なものが削ぎ落とされると、自分の心も研ぎ澄まされていくように感じた。


「チャロ!!」
ヒンドゥー語でレッツゴー!の意味の掛け声でトレッキングスタート!!

太陽が葉の隙間から降り注ぐ森の中を延々と登っていくと、すぐに汗が噴き出してきた。
自分と皆の荒い息使いが聞こえるが、足は止めない。

4時間ほど登り続け、澄んだ小川の流れる場所でチャイブレイク。
皆で手際よく小枝を集め、焚き火でチャイを涌かす。


チャイ待ち 空腹絶頂

















このトレッキングでは、食料を軽くするのと時間削減のために、お昼ご飯はチャイとビスケットのみ。
疲れた体に甘くてスパイスの効いたチャイが奥まで染みる。
だけどおなかは全然満たされない。

その後さらに4時間ほど歩くと、やっと森を抜けて視界が開けてきた。

「そういえば、今日はクリケットの試合の日だったかも。」とメンバーの一人がいう。
標高3千数百メートルの山奥で毎年試合を行っているそうだ。
目を凝らすと、逆側の山に一カ所だけ太陽が照らされている平地が見えた。
よくよく見ると、点の物体が動き回っている。
酸素の薄い何という場所で!と思うが、最高に爽快なのは間違いない。
すぐに息は切れるだろうけど、彼らにはどうってことないのだろう。


ヒマラヤとあちゃ
















そして道も何もないだだっ広い丘の上のような場所を登り切ると、
そこには目を疑うような光景が待っていた。

切り取ったようなバックグラウンド
















絵が貼付けられたような6000m級の山脈がどーんと目の前180度に広がり、
山の上とは思えないような平らな草原にはピンク、紫、青の鮮やかな花が一面に咲き乱れていた。


岩ごろごろの先はお花畑


















ここでテントを張れるなんて!朝目覚めてこの光景を拝めるなんて!
疲れが一気に吹っ飛ぶくらい気持ちが高揚する。
が、空腹は3度目のピークくらいに達して限界に来ていたので、
せっせと野菜を切って、お米を炊き出す。
パッケージ品は使わず、野菜とスパイスで1時間ほどカレーをしっかり煮込む。
マサラの香りがさらに食欲をそそってくる。


ご飯が待ち遠しい!


















今晩のご飯は、野菜たっぷりカレーと、あちゃ特製の巨大な水餃子とパンと中間くらいのやつ!(名前は不明)
大量の炭水化物でお腹を満たし、お皿は銀紙を張ったような紙のお皿、もちろんカトラリーはなし。

カレーとお米をつかむ指先がアツアツなのも、紙の皿がふやけてグダグダなのも気にせず、
無我夢中に素手でご飯をほおばった。むちゃくちゃ美味しい。

野菜の切れ端は鳥が食べて土に還るだろう、とそのままにし、
お皿は貴重な数滴の水で綺麗に洗い流し、次の日のために乾かす。


男性と同じ量を食べて、もう動けないくらいお腹一杯になったところで、
あと30分くらい丘を登って、トレーニングがてら夕日を見にいこうという声が。
本当は今すぐにでもテントに飛び込みたかったが、がんばって腰を上げる。
重い体に登り坂はかなり堪え、ヘッドライトを付けないと足元が見えないほどもう暗い。

もう上に登っても、着く頃には真っ暗なんじゃないのかなと思いながらも、皆の後を追って登る。
あと少し、あと少しと一歩ずつ頂上に近づくにつれ、空が赤みを帯びてきた。

するとまたも頂上には今まで見たことない世界が!


雲の上

















眼下にはネイビー色の雲、そして空はオレンジ色に光り、まさに何かが光臨してきそうな光景に、
皆目を奪われていた。こんなの見たことがない、と誰かがつぶやいた。
そして気付くと無意識に涙が流れていた。

思わず涙が出ちゃうくらい美しい光景に出会いたい、と思うことがたまにあったが、
ここはまさにそういう場所だった。この瞬間にはもう二度と出会えない儚さがいい。
しんどい思いをして登ったからこそのごほうびだ。

完全に真っ暗になるまで皆で空をぼーっと眺め、
さぁ、そろそろテントに戻って寝ようか、と丘を下っていく。
だけどとにかく真っ暗で目印もないから、こっちだっけ?あっちじゃない?と、
皆ハイになってるのもあって方向が全然分からない。

いや、こんなに長く急な登り坂はなかったよね、と引き返しては進みを繰り返してるうち、
あれ、まさか朝になるまでテントに戻れないとか?
と一瞬ぞくっとしたが何とか感覚で引き返すことができた。

やっぱり暗くなってから歩くのは危ないね、といいつつも、
まだあの雲の上の世界の余韻は残っていた。

初日からただのトレッキングではないドラマがてんこもり。
次の日に向けて、あったかくして寝袋にくるまった。

つづく。


次の日予告!霧でまっしろー!



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